節税対策(法人のお客様)
1.節税対策に対する考え方
弊事務所においては、顧問先様に様々な節税対策をご提案させて頂いております。以下の様な方は、ご相談ください。
- 節税方法の種類と方法について、分かりやすく説明して欲しいのですが・・・
→はい。弊事務所では、節税方法を種類ごと、期限ごとに分かりやすくご説明しております。
- その中で、我が社にとっての最適の節税方法を教えて欲しい
→節税方法は多岐にわたり、御社の状況によっては、逆にマイナスになってしまう場合もあります。じっくりと御社の財務内容をお聞きしてから、節税対策を実行させて頂いております。
- 節税を行うことにより決算書の数字が悪くなることがあると聞いたが・・・
→過度の節税対策を行うと、銀行や株主といった外部関係者に対して悪い印象を与える場合があります。このあたりにも細心の注意を払う必要があります。
- 決算まで時間がないが、急ぎの節税対策を教えて欲しい
→弊事務所では、お客様のご要望により、決算2ヶ月前~3ヶ月前に、予測の決算書を作成しております。その結果、予想外に利益が出そうであるならば、状況次第ではありますが、いくつかの節税対策を打つことが可能です。
弊事務所では、お客様と時間をかけて「対話」することにより、御社にとって最適の節税方法をご提案させていただいております。
2.節税の種類
法人の節税方法については、大きく分けると以下の4種類になります。
まず、その節税対策は、お金の支払いが必要かどうかを確認する必要があります。お金の支払いがいらない節税対策もあるからです。
また、節税の効果を確認することも大切です。
「永久的」とは、会社の利益を減らしたり、税金を減らしたりする節税の事を指します。
それに対して「将来への繰り延べ」とは、利益や税金が一時的に減りはするが、減った分は将来増える(つまりトータルでは変わらない)という節税をいいます。
そのため、良い節税とは、基本的には「永久的な節税」を指します。もちろん、「将来への繰り延べ」も、実行した段階では税金が一時的に減るため、余剰資金を別の事業に流用できたりしますので、検討すべきではあります。
それぞれの具体例は、以下をご覧ください。
3.具体的な節税方法
(1)Aタイプ節税(会社のお金は出ていく、節税効果は永久)
備品等を大量購入する等のお金が出ていく節税をいいます。多くの経営者様がイメージされている節税方法は、この方法になるかと思います。具体例は次の通りです。
1-備品等の大量購入
会社で使うパソコン等は、1台あたり30万円未満(事業年度合計で300万円が限度)であれば、その事業年度の経費となります。そのため、決算直前に、社長命令で備品の大量購入をされる会社様もおありのことと思います。
しかし、使う予定もない、不要備品の購入は、それだけ会社資金を流出させるため、結果として会社体力を奪う結果となります。くれぐれも余計な備品類は購入しないことです。
2-決算賞与の支給
従業員への賞与は、原則として支払ったときの経費となります。しかし、以下の要件を満たせば、その事業年度末までに未払いであっても、経費となります。
- 事業年度終了までに、支給額を各人別に通知すること
- 通知した全ての従業員に、事業年度末から1ヶ月以内にきちんと支払うこと
- 経費にしたい事業年度において、きちんと未払経費として仕訳を入力していること
毎月の会計処理をきちんとしており、「今年は利益が出そうだな。従業員に臨時で賞与を出してあげたいな」とお考えであれば、検討の余地ありです。
きちんと実行すれば、未払いであっても、会社の経費となります。
ただし、税務調査でも、この部分は確認されやすい項目ですので、書類等を後づけで作成するのではなく、きちんと手順を踏んで支給してください。
3-本社ビルの修繕を行う
本社ビルを建設して築年数が経過しているのであれば、大規模修繕を行うことも検討すべきかと思われます。
ただし、施工業者に支払った修繕費の内、建物の価値が増えた(耐用年数が伸びた)とされる分については、その年の経費ではなく、減価償却資産として減価償却の対象となり、支払った事業年度の経費となりません。
施行方法、施行材料等、業者と事前に打ち合わせすることが大切です。
このAタイプ節税を行うには、毎月きちんと決算を組み、最終利益の予測を立てられる体制にしておくことです。そのためには、税理士と毎月打ち合わせをしましょう。
また、予測の決算書を自社で作成できないようでしたら、早めに税理士に依頼することです。とにかく早めに決算対策を検討することです。
(2)Bタイプ節税(会社のお金は出ていく、節税効果は繰り延べ)
これは、経費を前倒しで支払う又は計上し、先行して当期の経費にしてしまう方法です。
これを「短期前払費用の特例」といいます
1-家賃を前払いする
会社が借りている倉庫等の家賃を前倒しで支払えば、支払った事業年度の経費とすることができます。
ただし、支払い方法を月払いから年払いに変更する必要があります。また、この制度を使った場合、継続的な適用が要求されていますので、この特例を使ったり、使わなかったりといった方法は認められておりません。
さらに、支払対象期間が1年を超えるものも認められておらず、適用の条件はかなり厳しいものになります。
2-生命保険料を前払いする
以前は支払った保険料が丸々経費となる生命保険(がん保険等。現在は法律変更により全額が経費とはなりません)がありました。
これは支払っている間は経費となり、契約満期後の返戻金受け取り時に一気に課税さるというものです。結局、最後の返戻金受け取り時に多額の税金を払うわけですが、黒字が数年間続きそうで、その間は税金を払いたくない場合には有効でした。
現在は、保険料の全額が経費になるタイプは、ほとんどないようですが、前ら払いすれば、それでも1/2や1/4が経費になります。
Bタイプ節税は、繰り延べ節税であるため、長い期間のトータルで見ると税金は変わらないことになります。しかし、前倒しで経費にできた分、税金の支払いが一時的に減るため、資金繰りが少しでも良くなるのではないでしょうか。ご検討してみてください。
(3)Cタイプ節税(会社のお金は出ていかない、節税効果は永久)
お金はでていかず、効果も永久的であるため、最初に検討すべき節税方法です。具体的には、以下の様な方法が考えられます。
1-税額控除の適用を検討する
会社の税金は、「利益×税率」により計算され、この税金を支払います。税額控除とは、この税金から直接控除することができる制度です。国の政策的配慮から、税額控除にも様々な種類がありますが、中小企業がまず検討すべきは次のものになります。
なお、税額控除は、納付すべき税金から控除する制度のため、納める税金がなければ(黒字でなければ)、当然使えませんので、ご承知おきください。(平成27年現在の制度を前提としています)
- 機械等を取得した場合の税額控除
資本金が3,000万円以下等の一定の要件を満たせば、本制度の検討の余地ありです。
1台あたり160万円以上(事務機器120万円以上、ソフトウェア70万円以上)の機械装置を購入した場合、原則として取得価額の7%が税額から控除されます。大変使い勝手の良い制度のため、黒字の企業様は忘れずに適用を検討しましょう。
- 雇用者の数が増えた場合の税額控除
事業拡大により従業員数が増えた場合は、増えた人数×40万円の税額控除が受けられます。ただし、ハローワークに事前届出が必要だったりと、使い勝手が悪い制度であることは否めません。
上記以外にも、教育訓練費の税額控除、所得拡大促進税制(給与を増額した場合の税額控除)等、様々な税額控除制度があります。黒字の企業様は忘れずに適用を検討したいものです。
2-貸倒損失の計上を検討する
商品を販売した相手先が、数年たっても代金を支払ってくれない場合、貸倒れとして経費に計上できる可能性があります。
税金の法律では、貸倒れを、法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れ、、形式上の貸倒れ、と3つに区分しています。
これらを慎重に見極め、貸倒れと判断できるものは、貸倒損失として経費にしましょう。ただし、決算書の内容も悪くなるため、そのあたりへの配慮も必要となります。
3-不要資産の売却・除却
使いもしない過剰・余剰設備は、売却または除却(廃棄すること)をお勧めします。これらにまだ残存簿価がある場合は、処分すれば、その分を売却損や除却損として経費とすることができます。
また、過剰設備はメンテナンス費用も馬鹿になりませんので、これの削減にもつながります。工場設備等は定期的に見直すことが必要になります。
(4)Dタイプ節税(会社のお金は出ていかない、節税効果は繰り延べ)
会社保有資産の価値低下分について前倒しで経費にする、機械・土地といった固定資産購入時に利益を一時的に減額する、といった方法を使い、お金の追加支出なく節税を行う方法です。ただし、繰り延べ型の節税ですので、長い期間でみた税金の金額は変わらないことになります。
1-資産の評価損を計上する
会社が保有している資産の価値が、著しく下落している場合は、評価損の計上を検討することも大切です。
例えば、上場株式については、50%以上下落している等、一定の要件を満たせば、評価損を経費とすることができます。また、棚卸資産についても、一定の要件を満たせば評価損の計上ができます。
会社が保有している資産は、売却や廃棄と行った手続きを踏まなければ、原則として経費にはできませんが、評価損の特例を使うことにより、前倒しで経費とすることができます。検討されてみてください。
2-圧縮記帳を適用する
土地・建物といった固定資産を、他人と交換した場合は、実質は売却し、その売却代金で購入したと考えられるため、自社が保有していた資産の譲渡益について課税されることが原則です。
しかし、そうすると、売却代金に税金がかかり、同等の資産を購入することができなくなります。そのために、圧縮記帳という制度が設けられています。この制度により、譲渡益を将来にわたって繰り延べることができます。
また、災害等により保険金が降りた場合、国からの補助金で購入した場合等、様々な圧縮記帳制度がありますので、要件は厳しいですが、忘れずにご検討ください。
3-特別償却制度を利用する
中小企業が特定の機械装置等を購入した場合には、通常の減価償却費だけでなく、特別に減価償却費を割り増しして経費にすることができます。
ただ、これも経費を前倒しで計上しているだけですので、経費となる金額の合計は同じになります。
4.弊事務所の節税へのスタンス
弊事務所では、節税対策について、以下の様に考えております。
(1)定期的な節税提案をいたします
弊事務所では、顧問契約を結んで頂いているお客様に対しては、決算直前だけでなく、毎月のご訪問時も含め、定期的に、適用可能な節税方法をご提案させていただいております。
また、毎年の税制改正により、適用できる節税方法、適用できない節税方法が変更となりますので、そのご案内も随時行い、最新の情報提供をお約束致します。
(2)無理な節税をお勧めしません
決算前の備品大量購入、といった無理な節税提案は極力行いません。このような節税は、会社の資金流出を招きますし、他の弊害(例えば、社員様が不要品を買う資金があればボーナスを出してくれよ、と考えるかもしれません)が考えられるからです。
(3)節税のみを考えません
節税は、会社繁栄のための手段ではありますが、目的ではありません。我々税理士はどうしても税金に目がいってしまうのですが、最終目標は御社の繁栄であり、節税ではありません。
会社繁栄のため、場合によっては、社長様と膝詰めでご対話させて頂き、その節税対策を本当に行うのか、ご一緒に考えます。そして、社長様がお持ちの選択肢の中でベストを探すお手伝いをさせて頂きます。
上記のように考えておりますので、節税対策は顧問契約を結ばれているお客様に限らせていただいております。
関連記事
法人の経営者様向けに、過去の節税記事をまとめましたので、ご参考になさってください。