税理士 石橋將年(いしばしまさとし)
会社設立によるデメリットは、社会保険加入だけではありません。逆に経費や事務負担が増えてしまう場合があります。今回はそのことについてご説明していきます。
経費が増える場合があります
会社を設立した場合は、色々と経費がかかるものです。負担が増えるものとして、次のものが考えられます。
赤字でも払わなければいけない税金がある
個人事業であれば、赤字の場合は税金を払わなくてもよいのです(消費税等がかかる場合がありますが)。
これに対して会社(法人)は、赤字でも払わなければならない税金があります。それが均等割(きんとうわり)と呼ばれる税金です。
東京都の場合、資本金が1,000万円以下で従業員50人以下であれば7万円です。これは区ごとにかかります。
本店が中央区、支店が江東区にある場合は、「本店分7万円+支店分5万円=12万円」が、赤字であってもかかってしまいます。お店の数が増えれば増えるほど均等割も増えていきます。
数万円~数十万円の負担増ではありますが、塵も積もれば山となるです。
交際費の制限がある
個人事業では交際費の額に制限はありませんが、会社では使える交際費に上限があります。
中小企業であれば、年間800万円以上使いますと、それ以上の交際費は経費になりません(平成27年現在)。
交際費の枠は法律改正によって頻繁に変わりますので、ご注意ください。
会社だと割高になる経費がある
個 人事業のときと、全く同じサービスを受けているにもかかわらず、会社名義になるだけで高くなってしまう経費があります。
電話料金は会社名義になるだけで基本料金が上がりますし、自動車保険も会社名義になると上がることが多いでしょう。
事務負担が増えます
会社は個人と違って、様々な手続きをしなければなりません。また、お金の管理も個人事業よりも厳密にする必要があります。具体的に見ていきましょう。
事務手続きが増える
会社の場合は、色々な手続きが必要になります。ざっと挙げてみると・・・
- 税務申告の手続き
- 登記の手続き
- 社会保険の加入手続き
- 労働保険の手続き
これ以外にも、様々な事務手続きが考えらます。一概には言えませんが、個人事業と比べて、ざっと2倍~5倍程度、事務手続きは増えるかと思います。
お金を厳密に管理する必要がある
個人事業では、事業用の通帳から個人の通帳にお金を移しても、何ら問題はありませんでした。
しかし、会社になると話は別です。会社の通帳から社長個人の通帳に、勝手にお金を移してはいけません。
会社のお金を社長個人の通帳に勝手に移しますと、場合によっては、会社が社長にお金を貸しているとみなされて、会社の方で利息を計上する必要があります(会社は営利追求団体なので利息を取るべきとされているのです)。会社の方で利息を計上すると会社に余計な税金(法人税)がかかってしまいます。
そして、社長は毎月のお給料制になります。会社から毎月、決まった金額の固定給を、お給料として受け取るのです。この金額は原則として年1回しか変更できません。事業のお金を自由に使えなくなるのは、会社のデメリットと言えるかもしれません。
税務調査の可能性が増えます
個人事業と会社では、どちらが税務調査の可能性が高いのでしょうか?
答えは「会社の方が税務調査に来る可能性が高い」です。
個人事業であれば、よほどのことが無い限り、税務調査に来ることはないでしょう。
弊事務所の顧問先様で、ある個人事業を行っている方がいらっしゃいます。毎年の所得金額(利益)が数千万円にもなりますが、そのような方でも、5年~10年に1回あるかないか、という感じです(もちろん、弊事務所の方から税務署宛てに、きちんとした資料を提出していますので、それで来ないのかもしれませんが・・・)。
これに対して、会社は税務調査に来る可能性が高いです。毎年の利益がそんなに上がっていなくとも、数年に1回来る場合もあります。
個人事業の方が税務調査が少ない理由として、税務署員の不足が挙げられます。税務署、特に個人事業を担当している部署は、とても忙しいのです。もちろん会社を担当している部署も忙しいのですが、個人よりは人員が多いようです。
会社を設立すると、メリットだけでなく、様々なデメリットもあります。会社を設立する際は、事前に専門家に相談し、時間をかけて決めたいものですね。
※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。