銀行融資に強い税理士って何ですか?

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

事業を始めるにしても、続けていくにしても、銀行融資は必要です。

たまに、「銀行融資に強い税理士」というフレーズを聞くことがあります。ですが、銀行融資に強い税理士とは、具体的に何をしてくれるのでしょうか?少し考えてみたいと思います。

「銀行融資に強い税理士」とは、具体的に何をしてくれるのか?

銀行融資で税理士ができることといえば、次のようなことでしょうか。簡単にまとめてみました。

現在の金利が適正かどうかのアドバイス

税理士は色々な顧問先の色々な銀行融資を見ています。そのため、「この企業のこの営業成績だったら、これくらいの金利が適正か?」といった、だいたいの相場観を知っています(もちろん金利なんか気にしない税理士もいますが・・・)。

そのため、現在の借入金の金利が適正か、年に1回(具体的には決算が終わる都度)、税理士に見直してもらうと良いでしょう。

借入金は、変動金利にしろ、固定金利にしろ、最初の借入の際は、皆さんとても気を遣われます。ですが、いったん借りてしまったら、あとは返済に集中してしまうので、金利について見直しをされない方がほとんどだと思います。ですので、税理士に相談してみて、明らかに高いようでしたら、銀行に金利の見直しをしてくれるよう、お願いしてみるが良いかと思います。

また、会社の経営状況が良いのに、金利が明らかに高い場合は、借り換えを検討してみても良いかもしれません。ですが、借り換えを検討される場合で、不動産が担保に入っている方は、担保の変更登記が必要になりますので、そこで費用が数十万くらいかかるかもしれません。そのコストも回収できるくらいに金利が高いようでしたら、借り換えを検討しても良いかもしれません。

なお、私の個人的な考えですが、金利については、都市銀行よりも、信用金庫や日本政策金融公庫の方が、一般的には安いと思います(もちろん会社の経営成績や担保の有無によって総合的に決まりますが)。ですから、中小企業様については、地元の信用金庫や日本政策金融公庫を積極的に利用されることをお勧め致します。

私自身の経験ですが、ある顧問先様(個人事業主)の借り入れで、金利が高いような気がしましので、顧問先様と一緒に、借入先である信用金庫に伺いました。

そして、「現在の金利は2.35%ですが、他行さんからも、借り換えの引き合いが来ているんです。幸い、今年の決算は業績好調で黒字でした。こちらも末永い取引を考えていますから、何とか2.0%を切る利率にしてもらえませんか?」と顧問先様と私とで、一緒にお願いしてみました。そうしたところ、その信用金庫様は、1.9%の金利を提案してくれました。

金利が適正かどうか、迷ったら税理士に聞いてみると良いかもしれません。

返済スケジュールについてのご心配

借入金が計画どおりに返済できないようでしたら、返済を伸ばしてくれるよう、銀行にお願いすることになります。これを「リスケ」といいます(リスケとはリスケジュールの略称です)

リスケと一口にいっても、色々な方法があります。例えばですが・・・

  • 元金返済を1年だけ待ってくれ(利息は払い続ける)
  • 返済期間を先に伸ばしてくれ(10年間→15年間といったように)
  • 元金も利息も待ってくれ(本当の最終手段)

資金繰りが苦しくなったら、まずは「利息は払い続けるので、元金の返済を待ってください」と銀行担当者にお伝えしてみるのも良いかもしれません。

また、返済期間を伸ばすという交渉もできますが、不動産担保でお金を借りている方は、不動産の耐用年数にご注意ください。といいますのも、銀行は、原則として不動産の耐用年数以上にはお金を貸しません。

例えば、賃貸ビルを担保にお金を借りるとします。そのビルの耐用年数が30年と銀行が査定した場合、30年以上は原則として貸せない、ということになります。

現在の借入期間が20年であれば、理論上はあと10年間延長できることになりますが、これもその方の資産状況や返済スケジュール等を総合的に見て判断判断されますので、ご注意ください。

また、業績が極端に悪い会社様は、リスケの交渉をする前に、預金を分散しておくことも必要かもしれません。銀行が危ないと判断したら、預金が差し押さえられてしまい、最悪、倒産につながってしまうかもしれないからです。

最近は金融庁からの指導もあり、そのようなキツイ取り立ては少なくなったと聞いています。ですが、何があるか分かりませんから、返済前には、差し押さえられないよう、預金を別の銀行に移しておくといったことも必要になるのかもしれません。

銀行担当者への紹介

中小企業の社長様が、直に銀行や信用金庫に行くよりも、税理士から紹介されて行く方が、良い場合があります。

といいますのも、普通に窓口に行きますと、窓口の担当者と交渉することになります・ですが、これら窓口の担当者よりも、外回り担当者の方が、一般的に成績優秀なことが多いからです。「成績優秀=融資の融通がきく」ということが言えると思います(勿論例外もありますが)。よって、税理士に紹介してもらってから行くと良いかもしれません(銀行の方も、いきなり一見さんが来るよりも、知り合いの税理士から紹介される方が安心して話せます)。

また、銀行担当者は、2年~3年に1回の定期異動により、他の支店に異動してしまいます(私の経験では、有名な都市銀行の場合、2年たたないで異動ということもあります)。ですから、税理士の方から銀行に定期的にコンタクトを取っておく必要があるでしょう。

最後のところで踏ん張って一緒に銀行に説明してくれるか

業績悪化で計画どおりに返済できなくなった、多額の借入金を相続した、といった追い込まれた状況では、銀行と粘り強く交渉することが必要になります。

そんなときに、税理士が顧問先様と一緒に、銀行に説明に行って、今後の展望や返済計画を話すことにより、最悪の事態を避けることができるかもしれません。

私の経験で恐縮ですが、以前このようなことがありました。

ある資産家の方(弊事務所の顧問先様)は、とある理由により借入総額が10数億円を超えていました(一番多いときで20億円を超えていました)。

主な借入先は、有名な都市銀行でした。色々なご事情で借入金が膨らんでしまったのです。当然、銀行から返済計画を求められました。顧問先様も高齢で、数字にあまりお詳しくありません。そこで、私がその顧問先様の代わりに、銀行に何度も訪問し、今後の返済計画や資金繰りについての細かな説明をしました。半年以上、交渉したでしょうか。何とか稟議がおり、融資をそのまま継続して頂けることになりました。

この交渉はとても大変でした。都市銀行の融資回収部門に何度も訪問しましたので(東京駅のすぐ側で、皇居が見えるほど景色がよかったのを覚えています・・・)。ですが、私自身、顧問先様が倒産されずによかったと思っております。

これは特別な例なのでしょうが、会社が困ったときに銀行と粘り強く交渉してくれる、それもまた税理士の一つの形だと思います。

また、銀行担当者も色々なタイプがいます。腹を割って話しますと、「石橋先生。今回は特別に**の理由ということにして頂ければ、細かな融資条件はクリアできます。ですから、そのような資料を作ってください」と、問題点を先に指摘してくれる担当者様もいらっしゃいます。

最近は、社長様と税理士とが一緒の訪問を嫌がる銀行も多いです。ですが、大事な場面で一緒に銀行へ同行してくれるか、そのことも税理士に確認しておいた方がよいでしょう。

 

税理士に積極的に相談してみましょう

上記のように、銀行融資に強い税理士?について考えてみました。

ある程度大きな企業になってきますと、優秀な経理担当者・財務担当者が銀行と直接交渉しますので、あまり税理士が登場する場面はありません。ですが、中小企業ですと、そこまで手が回りませんから、税理士が社長様の代わりにご説明することも多いのです。

また、皆様、借入のことはあまり他人に話したくはないようです(恥ずかしいという意識が働かれるのでしょうか)。現に、弊事務所の顧問先様でも、融資は私に相談されずに、ご自身でやられているところも少なくありません。

ですが、上記のように、税理士に相談すると、色々な角度から銀行融資を見ることができ、かつ、条件面の見直しもできるかもしれません。

銀行とお付き合いするのは大切なことですが、銀行の言いなりにならず、顧問税理士のアドバイスも取り入れて、きちんとしたお取引をされてください。皆様の事業のご発展をお祈りしております。

※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。