税理士 石橋將年(いしばしまさとし)
今回は、会社を設立した際のメリットである節税、特にご家族へ給与を支払うことによる節税について、その効果も含めて考えていきましょう。
給与を支払うことによる節税
(1)代表者への役員報酬による節税
個人事業では、代表者である自分が自分に対して給与を支払うことはできません(自分が自分に支払ったお金は単なる預金の移動になり経費にはなりません)。
個人事業では、次で計算した金額(課税所得)に対して所得税が課税されます。
「収入金額」-「経費」-「青色申告特別控除」=「課税所得」
ですが、法人では、次で計算した金額(課税所得)に対して法人税が課税されます。
「収入金額」-「経費」-「自分や家族への給与」=「課税所得」
この「自分や家族への給与」には、所得税がかかります。そのため、一見すると法人税はかからないが所得税がかかるから同じなのでは?とお思いになるかもしれません。
おっしゃる通りですが、給与については「給与所得控除」という制度があります。これは
「お給料をもらうサラリーマンは個人事業者と違って色々なものを経費にすることはできない。であれば、給与の金額に応じて一定額を経費として引いてあげましょう」
という制度なのです。そのため、この給与所得控除により一定額を控除できるため、その分が節税になるのです。
なお、以前は「みなし法人課税」という制度があり、税務上は個人事業であっても、自分自身に給与を支払って給与所得控除を受けられる制度がありましたが、20年ほど前に廃止されました。残念です・・・。
(2)家族への給与による節税
会社によっては、社長のご家族様が役員や従業員になっていらっしゃる場合も多いでしょう。その場合、お給料を分散して払いますと節税につながります。
所得税は「超過累進税率」という仕組みにより、お給料が高ければ高いほど税金が高くなる、という仕組みとなっております。
そのため、できるだけ、広く(複数の方に)、浅く(高すぎずに)、お給料を支払うことにより、家族全体でみると節税につながります。
ただし、実際にお仕事をしていませんと経費になりません。税務調査があったときに税務署にダメと言われてしまいます。そうならないように、「きちんと仕事をしていることを証明できるようにしておく」「他の従業員や同業他社と同程度の給与水準にしておく」、といった配慮が必要になります。
また、勤続年数が長くなれば、退職金を支払うことにより、さらなる節税を図ることができます(退職金は給料に比べて所得税が低くなるようになっています)。
給与による節税は社会保険の負担も含めて考える
ご本人やご家族に給料を支払うことによって、節税できるのは間違いありません。ですが、これからの節税は、社会保険料の負担も合わせて考える必要があります。
社会保険料の負担額は年々増加しており、平成27年5月現在、給料の約27%の負担となります。これを会社と個人とで半分ずつ負担することになります。
そのため、「税金+社会保険料」の合計負担を考えて、給与の金額を決める必要があります。
弊事務所では、顧問先様からご相談頂いた場合は、「給与+社会保険料」を合計したシミュレーション表を作成して、毎月の給与金額をご提案しております。
「社長の給料はいくらにすればよいのか?」「家族何人に対していくら払えば節税効果が高いのか?」といったご質問にも、数字でご回答することが可能です。
マイナンバー制度が平成28年1月から始まりますと、社会保険未加入の会社はあぶり出され、場合によっては年金事務所(中央区の会社ですと中央年金事務所になります)の調査により強制的に加入させられるかもしれません(会社は社会保険に必ず加入しなければなりません)。
社会保険料の負担は年々増加していきます。ぜひ、「税金+社会保険料」トータルでの節税をお考え頂ければと思います。
※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。