税理士 石橋將年(いしばしまさとし)
今回は、皆様からご質問の多い「物納」について考えてみたいと思います。税理士でも経験者が極めて少ないため、ここにまとめて考えてみたいと思います。
物納とは何か?
物納とは、(お金ではなく)物によって相続税を納める方法です。税金はお金で払うことになっています。会社が払う税金(法人税)、個人が払う税金(所得税)、不動産保有に対してかかる税金(固定資産税)、これらはみんなお金ではらうことになっています。(ただし、滞納した場合は保有財産を差し押さえられ、結果的に物で納めることになります。ですが、最初から現物で払うことはできません)
そういう意味で、最初から税金を物で納付できる物納という制度は、極めて特別な手続きであるといえます。
どれくらい物納が行われているか?
実際にどれくらい物納が行われているのでしょうか?国税庁に統計がのっています。これによりますと、平成26年度では年間120件しか申請されていません。なぜこのように少ないのでしょうか?次のような理由が考えられます。
- 金銭納付を困難とする理由書の記載要件をクリアできない
- 期限までに物件整備(土地の測量や隣地確認等)ができない
- 申請期限の延長中は利息がかかる
- 税理士が申請書類一式をとりまとめるのに相当苦労する
また、近年は土地の価格が上昇しており、物納するより売却する方が有利な場合も多かったと推察されます。
物納した方がよいケースとは?
物納は、お金で相続税を払えない場合に認められる、いわば特例中の特例のため、条件が厳しくなっております。ですが、下記のようなケースの場合は積極的に検討すべきでしょう。
- 土地を多く持っており預金が少ない場合
- 相続開始以後、相続した上場株式が暴落してしまった
- 自宅や賃貸不動産の大規模修繕を考えており手持ち資金が不安
基本的には、売却したいが事情(売れない、値下がりしている、投資のため保有しておきたい等)により手放せない資産がある場合には、物納を検討すると良いでしょう。
どうすれば物納できるか?
以下の二つの条件が必要です。
- 「(20年間の分割払いでも)お金で納付することができない」
- 「物納しようとする財産がきちんと整備されている」
とてもハードルは高いのですが、事前に準備することによってクリアすることも可能です。税理士と信頼関係を築かないとできません。
物納を経験している税理士はどれくらいいるか?
ほとんどいないと言ってよいでしょう。国税庁の統計によると、平成26年度では年間120件しか申請されていません。そのうえ、物納は難しく特殊であるため、ほとんどが大手の相続税専門事務所が引き受けており、報酬も高額になります。そのため、一般の開業税理士にとって、物納は難しいとは分かっていますが、何が難しいかが分からない状況だと思います。相続税専門をうたっている税理士は数多くおりますが、国税庁の統計のとおり、物納を経験している税理士はほどんどおりません。
なお、(平成18年の)改正前の物納経験税理士は数多くおります。しかしながら、改正後は、とても厳しくなっており、改正前の経験や常識がほとんど通用しなくなってしまいました。ご注意ください。
こちらの事務所では物納をお願いすることはできますか?
弊事務所では、平成18年改正後の大変厳しくなった物納について申請経験があり、実際に成功しております。また、国税局案件(原則として物納申請税額5,000万円以上または土地申請数10単位以上)も経験しているので、安心してご相談ください。
特に、大手事務所では、物納手続き終了まで長い時間がかかるため、物納手続きを避ける傾向にあると個人的には感じております。そのようなことにならないよう、ご相談者様のお立場にたち、売却、延納、物納といったあらゆる選択肢を、じっくりと時間をかけて考えていきます。そのような方はご相談ください。
物納について詳しく知りたいのですが?
こちらの相続サイトの「物納のご相談」をご覧ください。物納についての情報も随時更新しておりますので、ご参考になさってください。
物納は相続税を納めるための、いわば切り札的な方法です。(もちろん物納しないにこしたことはないのですが・・・)お家存続のために、あらゆることを考えておきたいものですね。
※本記事についてのご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。