税理士 石橋將年(いしばしまさとし)
こんにちは。中央区日本橋の税理士、石橋です。
当事務所では、日頃から「じっくり相談」を心がております。
この「じっくり相談」、なぜ必要なのか、どのような経緯で始めるに至ったかについて、簡単にご説明させて頂ければと思います。
「開業税理士」が「じっくり」相談にのる事務所は多くない
私が開業してから、もう少しで5年が経ちます。その間に、様々なご相談をお受けしてきました。
ご相談者様のなかには、税理士と初めてお会いする方、税理士を変更される方、相続でお悩みの方、色々いらっしゃいました。
そのなかで、多くのご相談者様から「税理士の方にじっくりご相談できて良かった」とのご感想を頂戴してまいりました。
自分自身、あまり他の税理士と比較することはないので、実感がわかないのですが、整理して考えますと、つぎのようなことになるんだと思います。
まず「開業税理士」の数が少なくなっている
税理士の登録者数は年々増加しています(平成27年3月末現在で75,146人)
ですが、開業税理士の数はどんどん減っています。次の一覧をご覧ください。
年度 | 税理士数 | 開業税理士 | 税理士法人 |
平成14年度末 | 66,674人 | 63,906人 | 440(本店) 154(支店) |
平成17年度末 | 69,243人 | 62,441人 | 1,079(本店) 421(支店) |
平成22年度末 | 72,039人 | 59,750人 | 2,140(本店) 863(支店) |
平成23年度末 | 72,635人 | 59,631人 | 2,366(本店) 1,004(支店) |
平成27年3月末 | 75,146人 | 58,548人 | 2,989(本店) 1,411(支店) |
※日本税理士連合会の発表によるデータを集計しました。
開業税理士とは、個人の税理士が営んでいる税理士事務所です。いわゆる街の税理士さんになります。
これに対して、税理士法人とは、税理士が2人以上集まって会社組織で行っている事務所です。いわゆる大規模事務所というものです(もちろん規模の小さいものもあります)。
ここからわかることは、個人で開業している税理士の数が減っている、という事実です。
以前までは、税理士資格を取得したら開業するというのが自然な流れだったのですが、長引く不況や会社数の減少によって、個人の税理士が一から開業するのはとても厳しい時代になってしまいました。
最近も、私より2歳年下の税理士から「開業するとしんどいですから、税理士法人に勤め続けますよ」と言われてしまいました。もっともな意見なのかなとも思います。
「じっくり相談」にのる事務所は多くない
じっくり相談にのるとは、どれくらいの時間をいうのでしょうか?
人によって様々でしょうが、私の感覚ですと、やはり最低1時間くらいを言うのではないでしょうか。
初対面の人間同士が会った場合、次のような流れになるかと思います。
「挨拶→自己紹介→雑談→本題」
これだけで、1時間は経ってしまうでしょう。さらに、専門的なご相談になりますと、さらに+1時間で、計2時間を超えてしまいます。
税理士法人といった大きな事務所ですと、各税理士は忙しいスケジュールのもと、組織で動いていますから、こちらの悩みを全て伝えるまえに時間切れ、ということになってしまうことも多いのです。
なぜ「開業」税理士が相談にのる必要があるのか?
税理士だけでなく普通の事業にも言えることでしょうが、
「開業していなければ覚悟がない」
ということが言えるかと思います。
例えば、「真面目に税務申告しているのに税務署に多額の税金を払えと言われた」というお悩みがあったとしましょう。
お勤めの税理士であれば、「仕方がありませんね。払いましょう」で終わってしまうかもしれません。誠にお恥ずかしいのですが、私自身も勤めているときは、そのような考え方がありました。お勤め人の思考回路として、「他人の問題に巻き込まれたくない」というのがあるんですね。
これが「開業」税理士であれば、「税務署が間違った事をいっているなら、きちんと反論しましょう」、という姿勢になります。私自身も開業してから意識が180度変わりました。
私が事業をしていて、同じ税理士報酬をお支払いするのであれば、勤めている税理士ではなく、開業している税理士にお願いしたいというのが本音です。
なお、私自身が考える開業税理士に必要な部分は次の通りです。
- 年齢(60歳位まででないと法律改正に追いついていけない)
- 経験(開業前に10年以上の実務経験は欲しいです)
- 熱意
特に、「熱意」は大切だと思います。
税理士にも分からない事があります。ですが、税理士は「分からない事の調べ方」を知っています。問題は、調べようとしないことです。
熱意は年齢とともに下がっていくと言われています。ですが、私はそうは思いません。要は、お相手の事を心配できる優しさがあるかどうか、ということだと思います。
なぜ私が「じっくり相談」をするようになったのか
この「じっくり相談」。言うのは簡単ですが、実行するのはなかなか難しく、お仕事に直接結びつかないことも多くございます。
私自身、数年前につぎのような体験がございました。(守秘義務の関係で、多少ぼかします)
ある大型の相続案件をお受けしました。財産は数十億円、相続税は数億円です。
ご主人がお亡くなりになられて、残された奥様は大変です。相続税をどうやって払うのか、財産をどうやって運用していくのか、問題は山積みでした。
事業はご主人が全てされていらっしゃいましたから、この後はどうやって続けていけば良いのか。奥様はかなり取り乱されていらっしゃいました。
税理士の立場としては、どうしても税金の事(相続税のこと)や、今後の財産運用のことを考えてしまいます。
当然、真っ先にそのご提案をしました。ですが、奥様は取り乱されてしまい、なかなか本題に入ることができません。
このような場合、税理士として、どのようにすべきなのでしょうか?
正解は「じっくりとお話しをお聞きすること」なのです。
1回目、2回目のお打ち合わせでは、本題(お仕事の話)を中心に打ち合わせしました。
ですが、3回目のお打ち合わせでは、「お亡くなりになったご主人様の思い出や、一番楽しかったこと、苦しかったこと」をお聞きするように致しました。
どれくらい時間がたったでしょうか。昼過ぎに当事務所でお打ち合わせを始め、気づいたら外の景色が暗くなっていました。時間を確認すると夜の9時半。計7時間半もお話しをお聞きしていたことになります(ちなみに、この間、二人ともトイレには1回も行っていません)。
この経験は、私の中に強烈に残りました。
- まずは、じっくりとお悩みや想いをお聞きする
- その後で、じっくりと今後の対応を考える
税務の知識うんぬんよりも、ご相談者様にとって、この2つがまず大切なのです。
ですから、まずはお話しを「じっくり」とお聞きし、「じっくり」と今後の方針を考える。
2つを合わせて「じっくり相談」と名付けました。
「じっくり相談」のできる税理士が、お近くにいらっしゃらない方は、お気軽にお声かけください。