税理士の選び方について

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

中央区日本橋の税理士、石橋です。

最近、「どのように税理士先生を選べば良いですか?」というご質問を多く頂きましたので、税理士の選び方について弊事務所なりの考え方をお伝えできればと思います。税理士先生をお選びする際の参考になれば幸いです。

実際に会って人柄や相性を確認する

どんな仕事やビジネスでも、やはり人間が相手ですので、ご相性やお人柄が合うか合わないかがございます。(これは良い悪いの問題ではありません。単なるご相性の問題です

ですが、ただ、闇雲にお会いするのでは効率が悪いですから、つぎのような、ご自分との共通点やアピールポイントを見つけてから面談のお約束を取るのが良いかもしれません。

  • 自分との年齢が近い
  • 経歴が似ている
  • 出身地が近い
  • 優しそう、まじめそう

そして、面談の当日は、いきなりお仕事の話をするのではなく、ご自分との共通点からお話を始めれば、お互いリラックスして、良いお話も悪いお話も含めて、最初から本音に近いお話を引き出せるのではないでしょうか。(ご相談者様も緊張していますが、税理士も緊張しているのです・・・

また、真面目そうな方か、という点も大切です。税理士には会社や個人の通帳等を見せる機会もあるため、結果的にお金の流れを伝えることになります(これが他の専門職である弁護士や司法書士と異なるところです)。そのため、お預けした情報を誠実に守り、きちんと管理してくださる方かどうか、という点も考えながらお話をされた方が良いかと思います。

自宅や会社から近い税理士を探してみる

税理士仲間で報酬の決め方について色々と話すのですが、やはり、顧問先様への移動時間が一番コストがかかる、とのことでした。(私もそう思います)

本来であれば月3万円の報酬でご提供できるサービスが、片道1時間程度かかってしまいますと、+1万円で月4万円となってしまうこともあります。

このような場合、顧問先様の方から税理士事務所にお越し頂くことにより、逆に月3万円ではなく、月2万円でご提供できる場合もありますが、あまりに遠いと顧問先様も大変ですよね。

そのため、似たような条件・知識・お人柄の税理士先生がお二人いらっしゃった場合、近い方の先生にお願いするほうが双方によって良いと思います。

自分の必要としている知識を持っているか確認してみる

「税理士は税金のことなら何でも知っている」と思い込むのは間違いです。

「会社の合併に詳しい」「大企業の税務に強い」「相続税に詳しい」「不動産関連の税務に詳しい」「創業時の融資や税務手続きに強い」といったように、それぞれ専門性があります

なぜこのようなことがおきるのでしょうか

それは税法が難しすぎるからです。(税理士なのに何を言っているとお思いかもしれませんが・・・)

法人税の難解さ(平成13年に組織再編税制が創設)、所得税法の広大さ(条文数が200以上もある)、消費税法の怖さ(届出書1枚出し忘れたせいで何百万もの損害)、相続税法の複雑さ(借地借家法・建築基準法・都市計画法等の周辺法規を知る必要がある)、書き出したらきりがありません。

また、税理士は何でも相談される、ということも理由に挙げられます。税理士は税の専門家なのですが、顧問先様からは「新しい取引先が信用できるかアドバイスを欲しい」「賃貸ビルの管理で困っている」「助成金はどうすればもらえるのか」「銀行融資をする際の手順を教えてほしい」「入退社が激しくて社員が定着しない」等々の税金以外のご質問が多数よせられます。これらの質問にお調べしていくうちに、税理士も自分が興味のある分野の事を重点的に調べるようになります。そうなりますと、勉強家の税理士先生であればあるほど、専門分野というものができあがってくることになります

そのため、お会いしたときには、少なくとも「(お願いしようとしている業務の)ご経験はおありですか」とお聞きする必要があるでしょう。その業務のご経験がおありであれば、とりあえずは大丈夫かと思います。

お願いしたい業務を明確にする

お願いしたい業務を明確にしてから、税理士に相談するほうが良いでしょう。というのも、税理士の方も実際の作業量や税務リスクが見えなければ、お見積もりを出せないからです。どの程度までご自分で資料をまとめられるかによって報酬も増減します。例えば、次のようなお考えで税理士と相談してみると良いかもしれません。

創業から間もない会社様の場合

  • 収入をエクセル等でまとめられるか
  • 領収書や請求書を自分で整理できるか
  • 記帳代行(帳簿付け)をお願いするか自分でやるか
  • 税理士と会うのは毎月か年数回か
  • 税理士本人に対応をお願いするか事務所職員に対応をお願いするか

賃貸不動産の確定申告をお願いされる場合

  • 部屋数は多いか少ないか
  • 入居者の入れ替わりが多いか少ないか
  • 今後は不動産管理会社の設立や資産の組み替えを検討しているか否か

税理士のほうも、ご相談者様のご事情を総合的に考えて報酬をご提案しますので、なかなか提示している料金どおりにいかない場合があります。(一概にこの報酬です!と言えないところに、報酬金額の難しさがあります)。

ですが、報酬金額の決定はとても大切なことですので、税理士とざっくばらんにお話されてみてはいかがでしょうか

なお、ご注意頂きたい点がございます。それは、入り口の最低料金に目を奪われないということです。税理士事務所によっては、基本料金(入り口)は安いのですが、相当に細かいオプション項目を設定し、料金をどんどん加算していって最終的な報酬は高めになった、ということがございます。そのため、ざっくばらんに最終的な報酬を、最初にお聞きしてしまいましょう。

弊事務所では、おおまかな料金設定とさせて頂き、特別な業務のときに臨時報酬をいただくというスタンスです(昔ながらの税理士先生に多い報酬体系です)。

報酬体系は各事務所ごとの考え方ですので、良い悪いではないと思います。不明な点は遠慮せず最初にきちんと聞いておくことが、依頼者と税理士の双方にとって良いと思います

税理士本人に相談できるか否かを確認する

大手事務所では多くの場合、中小企業の担当者を若手に任せます。というのも、人件費(若手であれば安く雇用できます)を抑えませんと、利益が出ない業務モデルになっているからです。

また、この業界特有の慣習なのですが、いわば丁稚奉公の側面があり(仕事を覚えさせてあげる代わりに給料が極めて安くかつ労働時間が長い)、一通りの業務を覚えると、短期間でより良い条件の職場に転職してしまうことが多いのです。

そのため、税理士事務所を選ばれる際は、

  • 今の担当者が長く担当してくれるか(頻繁に担当が変わらないか)
  • 税理士が担当してくれるか(税理士の担当を希望の場合)

上記2点をご確認頂いた方がよろしいかと思います。特に担当者が長く担当してくれるか(頻繁に入退者を繰り返していないか)を確認することは大切です。新しい方が来たら、また一からご説明しなければなりませんので・・・。

税理士を選ぶ際は・・・

税理士選びについて、色々とご説明してきましたが、最後にまとめてみたいと思います。(個人的意見なのでご参考程度にお考えください・・・)

私はいつも「お医者様を選ぶときと同じように考えてください」とお伝えしています。

お医者様にかかるときの第一目的は「病気を治して欲しい」ということです。ですが、我々に医学の知識はありません。

そんなときに、どうやってお医者様を選ぶのでしょうか?

立地が良い、病院が綺麗、受付の方が美人等々、いろいろあるでしょう。ですが、一番は「自分の身体のことを心配してくれるのか?」ということではないでしょうか。

弊事務所の顧問先にお医者様がいらっしゃいます。そのお医者様は「医者が見れば、診察内容や処方箋を見て、どの医者が優秀な医者、ある程度は分かります。」とおっしゃっていました。

もちろん、誰もが優秀なお医者様に見てもらいたい、そう思うでしょう。

しかし、まずは「この患者さんを治してあげたい」というお気持ちを持たれている先生に診察してもらいたいと思われるはずです。

税理士も同じです。

この人なら自分のお金のこと、人生のことを心配してくれそうだな

そう思える税理士先生にお願いするのが、最良の選択だと思います。

難しく考えなくていいと思います。ご自分の経験や直感で「この人とは上手くやっていけそうだ」という感触を得られたのであれば、それが、その時点での正解だと思います。

税理士とのお付き合いは、ある意味、結婚に似ているのかもしれません。自分の全てをさらけ出す(お金のことを伝える)、一度決めたらお付き合いが長く続く(顧問契約は長期になる可能性が高いです)。税理士の仕事は、弁護士先生や司法書士先生と違い、基本的には長いお付き合いになるのです。

もちろん、高度な専門知識も大事です。ですが、上記の理由により、実際にお会いした際のご相性やお人柄を重視して決めたほうが上手くいくかと、個人的には思っております。皆様のご参考になれば幸いです。