不動産賃貸業(不動産オーナー)の確定申告のポイント
不動産賃貸業の税金は、普通の事業に比べて、
「金額が大きい」
「最初(物件取得時)の処理で間違うと後々面倒になる」といった特徴があります。
不動産オーナーの方は、次の点に注意すると良いかと思われます。
収入について
何を収入に入れるべきか?
税金は、「(収入-経費)×税率」で計算します。ですから、何を収入にすべきか、細かく決まっています。
地代や家賃を入れる。これはお分かりでしょう。ですが、漏れやすいものとして、次があげられます。
- 土地や家賃の契約更新料
- 借地人変更に伴い新借地人または旧借地人から貰う承諾料
- 共益費
- 敷金や保証金のうち返さなくて良いもの
- 電気料金や水道料金(実費立替の場合を除く)
金額が大きいものは税理士等に確認されるでしょうから、あまり問題にはならないかもしれません。
漏れやすいのは電気料金といった光熱費です。これらは立て替え方式(電気会社からの請求額と全くの同額を請求して立て替え方式で精算している場合)を除いて、原則として収入に入れなければなりません。
地代や家賃の収入計上時期
「原則」
地代や家賃について、いつ収入にあげるべきかですが、原則は「支払日」です。
具体的には契約書を見てください。
多くの場合、「当月分を前月末日までに払う」と書いてあるかと思います。
契約書にそのように書いてあったら、平成28年1月分は平成27年12月末にもらいますので、その分は平成27年の収入にしなければなりません。
つまり、前倒しで収入に入れることになります。税務署は早く税金をとりたいんですね。
「特例」
上記が原則ですが、事業的規模に該当するといった一定の条件を満たして、継続的に処理するのであれば、賃貸期間に対応して収入にあげることができます。
先程の例ですと、平成27年12月にもらった平成28年1月分家賃は、平成28年の収入にすることができます。
つまり、収入にあげる時期と賃貸期間とを対応させることができます。
なお、事業的規模でない場合でも、この特例を適用できる場合があります。詳しくは税理士にご相談ください。
また、たまに土地を貸していらっしゃる方で、契約書を作っていない方がいらっしゃいます。この場合は今までの慣習に従います。
貸している方、借りている方で、「当月分を当月に払う」という口頭の約束ができていれば、それに従います。
敷金の返金不要部分の収入計上時期
土地や建物を貸した際、敷金(保証金)を預かる場合も多いと思います。
これらには、全額を返金する契約もあれば、一部を償却して返金しない契約もあります。
この返金不要の部分は、返金不要が確定した時の収入に計上しなければなりません。
では、いつが返金不要が確定した時なんでしょうか?
契約書を見てください。
「敷金100万円のうち、退去時に30万円を償却して、残金を返金する」
とあったら、どうしますか?
正解は「入居時の収入に計上する」ということなんです。正確には契約日または引き渡し日(入居日)になります。
なぜでしょうか?
入居して1ヶ月で出て行っても、30万円をもらうことは確実ですよね。
ですから、30万円は入居したときの収入にするんですね(これを「権利確定基準」といいます)。
間違えやすいので、お気をつけください。
供託された地代や家賃
地代や家賃について争っている方も結構いらっしゃいます。
例えば、大家さんが家賃の値上げを要求して、入居者とトラブルになったとします。
その場合、入居者が家賃を持って行っても、大家さんは受け取りませんよね。
そうしたら、入居者は法務局に行って、「供託通知書」という緑色の紙を書いて法務局に家賃を払います。
こうすることによって、法律的にはきちんと期限までに払ったことになるんです。
数日後、法務局から大家さんに供託通知書が送られてきます。
これを法務局に持って行けばお金に換えてくれます。
ですが、換えられません。
というのも、供託通知書を法務局にいってお金に換えたら、相手が払ってきた安い家賃を認めたことになってしまうからなんですね。
当事務所のお客様でも、供託金の紙が数十枚、合わせて何千万円もたまっていた方もいらっしゃいます。
話しが脇にそれましたが、この供託されて実際に入金がなかったとしても、収入にあげなければなりません。
大家さんからはよく、
「供託金を法務局に行って換金したときに収入計上すべきじゃない?」
と言われます。緑色の供託通知書を受け取った段階では、お金になっていないので、そう思われるのも無理ありません。
ですが、法律で決まっているので、致し方ありません・・・。
お気をつけください。
平均課税を検討
土地をお持ちの方で、よくあるお間違いとして、平均課税をつかっていないというものがあります。
土地を貸している方は、借りている方と「土地賃貸借契約」を結びます。
土地の賃貸借は、借地借家法に基づいていますから、20年ごと、30年ごとに更新契約を結ぶことになります。
更新契約の際は、土地をお持ちの方は、慣習として更新料をもらいます。数百万円から、場合によっては数千万円になることもあります。
この数百万円に高い税率(所得税・住民税の最高税率は55%)をかけてしまうと、半分以上のお金が税金支払いによりなくなってしまいます。
税務署も鬼ではありません。これでは大変だよね、ということで、平均課税という制度があります。
計算は細かいのですが、ざっくり言いますと、更新料を5年間に分けてもらったと仮定して税金を計算しましょう、という制度です。
所得税は超過累進税率(所得が高ければ高いほど税率が高くなる)を採用していますので、平均課税を適用できれば、ほとんどの場合で、税金が安くなります。
ですが、摘要を忘れてしまう方も多いため、注意が必要です。
なお、更新料の金額が大きいといった一定の場合には、不動産所得ではなく、譲渡所得になるかもしれません。詳しくは税理士にご相談ください。
経費について
経費に入れられる領収書は少ない
個人の不動産オーナー様が支払う税金は所得税です。所得税の法律では、経費は「収入に直接対応しているもの」ということになっています。
不動産収入を直接得るためのものとは、何でしょうか?
賃貸不動産を購入するための借入金利息、不動産業者への仲介手数料、これらは当然経費になります。
ですが、例えば交際費はどうでしょう?不動産賃貸業で飲食接待は絶対に必要なのでしょうか?
入れられる経費は、他の個人事業の方より、かなり少なくなってしまいます。ですが、物件の見回り費用(旅費交通費)や、不動産研修セミナーへの参加は経費になるかと思われます。細かく集計して、漏れがないようにしましょう。
貸し倒れを計上する
地代や家賃がきちんと入金されない場合は、貸し倒れによる経費計上を検討することになります。
詳しくは「未収地代や未収家賃の貸し倒れ処理について」をご覧ください。
小規模企業共済を検討する
不動産賃貸業を専門に行っている方は、小規模企業共済を検討してみてもいいかもしれません。
掛金は全額所得から控除できますし、個人事業を廃業したときは、掛金を退職所得として受け取れるので税金がとてもオトクです。
ですが、サラリーマンが副業的に不動産賃貸業をしている場合は加入できませんので、ご注意ください。
消費税の注意点
賃貸不動産の収入のうち、土地の地代は非課税取引になります。
ですから、これについては消費税を払う必要はありません。
また、家賃のうち住宅用のものも非課税取引になりますので、消費税はかかりません。
問題は、土地のうち駐車場利用、家賃のうち事務所用・店舗利用、といったものには消費税がかかります。
消費税は、2年前の課税売上が1,000万円を超えますと、支払う必要がでてきます。
(ですから、土地だけを貸していて地代収入が数億円でも、消費税を払う必要はありません)
不動産オーナー様で消費税をお支払いの方は、多くの場合で簡易課税を適用されていると思います。
ほとんどの場合で、簡易課税の方が消費税が安くなりますので。
(簡易課税は2年前の課税売上が5,000万円以下の場合に適用できます)
ですが、新規不動産を建設・購入時には、建物金額の消費税について控除・還付を受けられる可能性があります。ですが、簡易課税ですと、これらは受けられません。
簡易課税をやめる場合も、始めた時と同じように、事前届出が必要です。
ですから、大きな物件を購入・建設される前は、必ず税理士と相談して、消費税をシミュレーションしてもらいましょう。
なお、簡易課税ですが、平成27年4月1日より、控除できる割合が50%→40%となり、消費税が増税となっています。お気をつけください。
税理士に依頼すべきかのポイント
極端なはなし、賃貸不動産の数が少なければ、書籍やインターネットでお調べになって、ご自分で確定申告ができると思います。
ですが、次のような方は税理士に依頼した方が、結果的にオトクになるかと思います。
- 将来の土地の売却や運用を考えている場合
- 不動産管理会社での節税を考えている方
- ある程度の資産があり相続対策も含めて考えている方
- ご自分でやられているが本業が忙しくて計算が大変になった方
以前はご自分でやられていて、途中から税理士にお願いしたいと言う方も、多く見てまいりました。
それらのケースでは、ほとんど場合でミスが見つかり、ミスを修正することにより、結果的に税金を安くすることができました。
当税理士事務所(東京都中央区)では、初回1時間の無料相談を行っております。
確定申告を親切丁寧な税理士にお願いしたい、と言う方はご相談ください。