分離課税について
分離課税とは?
確定申告をするとは、所得税の計算をすることです。
所得税を計算する所得は、所得(収入の種類)を10種類に分けることになっています。
そして、それぞれの所得ごとに計算した所得金額を合計し、合算した総所得金額に税率を乗じて申告・納付するのが総合課税です。
ですが、総合課税とは別に、分けて(分離して)所得税を計算するものがあります。
これを分離課税といいます。
分離課税には源泉分離課税制度と申告分離課税制度があり、申告・納付の方法が異なります。
源泉分離課税制度は、基本的には、我々(納税者)はが確定申告をする必要はありません。
これに対して申告分離課税制度は、我々が確定申告して税金を納める必要があるものです。
(1)退職金に係る税金
分離課税の対象で代表的なものが退職金(退職所得)です。
退職金は退職所得という所得になります。
退職所得は、特別な退色所得控除が設けられており、普通にお給料をもらう(給与所得)よりもかなり優遇された制度になっています。
退職金は、退職後、生活をしていくための貴重な資産、あるいは退職して事業をおこす場合の開業資金となります。
そのため、通常の所得よりも税金を安くしてあげよう、という趣旨から退職所得は分離課税、つまり普通の税金とは別計算となっています。
退職所得の所得控除は、勤続年数に応じて定められており、以下のような計算式になっています。
(平成27年現在)
【退職所得控除】
20年以下 | 40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合は80万円) |
20年以上 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
退職所得は、分離課税の中でも、源泉分離課税となっています。
退職金を支給する会社側で、所得税と地方税を差引き納税しますので、退職金をもらった側は、基本的に確定申告をする必要はありません。
(ただし、一定の場合は確定申告の必要があります。また、あえて確定申告をした方が有利になる場合もあります)
(2)土地・建物の譲渡所得に係る税金
土地・建物を売却した際は、譲渡所得になります。
この譲渡所得も分離課税制度の対象となります。
土地・建物の譲渡所得にかかる税金はどのように算出するのでしょうか。
まず、譲渡所得金額を計算する
土地・建物のに係る税金を計算するために、まず課税の対象となる課税所得の金額を算出します。譲渡所得算出の計算式は、
譲渡所得の金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
となります。
特別控除額は以下のようになっています。
(平成27年現在の法律によっています。一定の条件のもと特別控除額を使うことができますが、要件は厳しいため必ず専門家にお問い合わせのうえ確定申告してください)
収容等により土地・建物を譲渡した場合 |
最高5,000万円 |
居住の用に供している家屋やその家屋と共にその敷地を譲渡した場合 |
最高3,000万円 |
特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合 |
最高2,000万円 |
特定住宅造成事業等のために土地を譲渡した場合 |
最高1,500万円 |
農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 |
最高800万円 |
つぎに、税額を算出する
算出した課税譲渡所得に税率をかけて税金を計算します。
税率は、所有期間によって異なります。
1月1日における所有期間が5年超 | 所得税=譲渡所得×15% |
住民税=譲渡所得×5% | |
1月1ににおける所有期間が5年以内 | 所得税=譲渡所得×30% |
住民税=譲渡所得×9% |
(3)株式の譲渡所得に係る税金
株式の売却益も他の所得と合算せずに、独自の税率をかけて税率を算出する分離課税となっています。
頻繁に株式を売り買いしている人の場合は、売却益に係る税金を確定申告時に計算し、申告納付するとなると、手続が非常に煩雑になってしまいます。
そのため、上場株式等譲渡益申告不要制度という制度が設けられました。
この制度は、証券会社に特定口座を設けた場合その口座で株式売買をしたものに関しては、譲渡益に税率を乗じた額を証券会社が税務署に納付するというしくみです。
これを利用した場合は確定申告をする必要はありません。
株式の譲渡所得に係る税率
平成21年~平成25年分 | 平成26年分以降 | |
上場株式等 | 10% (所得税7%、住民税3%) |
20% (所得税15%、住民税5%) |
上場株式等以外 | 20% (所得税15%、住民税5%) |
分離課税の計算、特に譲渡所得の計算は、特例が多くあります。
間違って確定申告して税金を多く払った場合、税金を取り戻せる場合もあります。
(これを「更正の請求」といいます)
ですが、更正の請求ができない場合も数多くあります。
不動産の売却といった金額が大きいものの確定申告は、税理士に依頼するほうが無難ですね。