税理士 石橋將年(いしばしまさとし)
節税メリットがある不動産管理会社には、3つの方式があるのですが、今回は一つ目「管理委託方式」についてご説明していきたいと思います。
管理委託方式とは?
管理委託方式とは、個人所有の不動産管理を身内の会社にお願いして、管理料をその会社に支払う、という方式です。管理料方式や管理料徴収方式と呼ぶこともあります。
街のミニミニや、地元の不動産屋さんが、不動産の見回りや家賃回収をしてくれているかもしれませんが、そのサービスを自社で行って、依頼主(個人の不動産所有者)から管理料をもらうという仕組みです。
メリットやデメリットについて
比較的簡単に始めることができる
管理委託方式は、比較的簡単に始めることができます。大まか流れとしては・・・
- 不動産管理会社を設立する
- 個人と会社とで業務委託契約(不動産の管理をお願いするという契約)を結ぶ
- 不動産管理会社の社員が、実際に管理業務を行う
- 管理料を個人から会社へ支払う
- 会社は役員・社員にお給料を支払う
上記のような流れとなります。会社と個人とで業務委託契約を結ぶわけですが、これは不動産オーナーである個人と、その身内の会社とが結ぶわけですから、簡単に契約することができます。
その業務委託契約に「管理料として毎月**円を支払う」として、管理料を定期的に会社にお支払いするのです。
節税の効果が薄い
管理委託方式は、簡単に始められる反面、節税効果が薄いです。
不動産管理会設立による節税は、個人の利益(課税所得)を会社に移すことを目的としています。
つまり、いかに個人の利益を会社に移せるかがポイントとなるわけです。
では、管理委託方式では、いくら個人から会社に利益を移せるのでしょうか?
上記でご説明したとおり、管理委託方式は、一般的に「管理料として毎月**円を支払う」といった契約になります。
この管理料ですが、一般的には「個人の家賃収入×5%~10%」程度が限度と言われております。これ以上に設定しますと、税務署から否認されるかもしれません。また、近隣の不動産業者の管理料の料率も確認し、相場から高すぎないかもチェックしてみましょう。
例えば、家賃収入が年間2,000万円であれば、「2,000万円×8%」となり、利益を160万円しか移すことができません。これでは、全く効果がなく、むしろ会社運営のための費用倒れになってしまいます。
家賃収入が少なければ、この方式にしてはダメなのです。このような場合は、他の方式(資産保有方式)に切り換えるか、いっそのこと会社を清算してしまった方がよいかもしれません。
実際にお仕事をしなければダメです
3つの方式、いずれであっても、実際にお仕事をしないと税務署から否認される可能性があります。
以前、何人かの税理士先生から、このようなご相談を受けました。
「管理委託方式で不動産管理会社をやっているが、実際の管理業務は全て地元の不動産屋に丸投げしている。これは問題ありますか?」
というものです。
これは問題です。というのも、会社は管理の対価として管理料をもらうのです。実際の管理業務を全て、地元不動産業者に丸投げしていては、税務署に会社の実態がないとされ、個人の方で管理料が経費にならなくなり、さらに、役員・社員のお給料が経費にならなくなってしまうでしょう。こうなりますと、不動産管理会社を設立した意味がなく、むしろマイナスになってしまいます。
こうならないように、下記のように実際に管理業務を行い、業務内容を契約書に記載するのです。
- 定期的に物件の見回りをして記録を残す
- 入居者からの連絡を受け、クレーム対応する
- (場合によっては)家賃集金業務を個人に変わって会社が代行する
- 草むしり、除草等をやる、または業者を手配する
- 深夜早朝の緊急クレーム対応をする
管理委託方式は比較的簡単に始められる方式ではありますが、節税効果が薄く、家賃収入が数千万円ないと効果が発揮できないでしょう。バブル時には簡単に始められるので大流行しましたが、家賃収入の下落により、あまり利用されなくなったと感じています。
ですが、家賃収入が高額になる方にとっては、まだまだ有効な方式です。
弊事務所の顧問先様でも、家賃収入が数千万円以上になる方で、こちらの方式を採用されている方もいらっしゃいます。家賃収入が高額になる方は、検討されてみるのもよいかもしれません。
※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。