税理士 石橋將年(いしばしまさとし)
今回は、払いすぎた税金を税務署から戻して貰う手続きについてご説明させていただきます。
具体的な手続き
税務署に税金を多く支払ってしまった場合は、「更正の請求(こうせいのせいきゅう)」という手続きを行うことになります。(更正の請求とは間違いを正すという意味です)
具体的には、更正の請求書という書類に、説明資料(間違いの原因を説明する資料)をつけて税務署に提出します。そして、税務署員の判断を仰ぐことになります。自分が行った申告の間違いを直して貰うわけですから、きちんとしたご資料をつけてご説明する必要があります。
例えば、事案の概要をまとめた資料(事情説明書)は大切です。これに事案の概要をまとめませんと、税務署員も内容がわかりませんので判断できません。また、この他にも、できるだけわかりやすい資料(エクセルによる更正前後の比較表や検算資料)も添付した方がよいでしょう。その意味では、作成する税理士の作文力を問われることになります。
具体的な事例(1)
以前、このような事案がありました。
地主様(弊事務所の顧問先様)が借地人様から、建物建て替えの承諾料をもらう契約をしました。(借地人様が建物を建て替える際は、地主様に建替承諾料を支払うのが一般的です)。
ただ、建て替える借地人様は、「建築費用+地主様への建替承諾料」が必要になります。借地人様は普通のサラリーマンでしたので、そのような大金を一度に支払うことはできません。そのため、銀行融資を検討されました。
そして、地主様と借地人様とで「建替承諾料***万円の一部として本日***万円支払う。残りの***万円は、銀行融資がおりたときに支払う。万が一、銀行融資がおりなかった場合は、既に支払ったお金は今までの借地契約の更新料に充当する」といったものです。
この契約には二つの問題点があります。
1つ目は「期限を区切っていない」ということです。このままですと、A銀行で融資がおりなかったとしても、B銀行で融資申請をするといった具合に、永遠に契約期限を引き延ばされてしまいます(もちろん、地主様と借地人様との関係が良好のため、そのようなことにはなりませんが)。「*月*日までに融資契約が完了しなければ既に支払った金銭は従前からの更新料に充てる」旨の一文を入れておくべきでした。
2つ目の問題は税務上の問題です。地主様は建替承諾料を受け取りました。この受取金額ですが、受け取った金額(受取予定額の一部)のみで税務申告しても良いのでしょうか?皆様もご存じの通り、地主様が受け取った更新料は所得税の課税対象になります(不動産所得になり、条件によっては一時所得の適用も可能です)。所得税の収入金額の考え方は「権利確定主義」です。そのため、既にもらった金額だけでなく、これから貰うであろう金額が決まっているなら、それも含めて申告しなければなりません。そのため、貰えない可能性のある金額についても申告しなければなりません。
予定額の一部のみを受け取った状態で数年間が経過しました。借地人様の銀行融資がおりないことが原因でした。地主様と借地人様との仲は良好なので、「ある時払いでいいよ」ということで数年間が経過してしまったようです。このケースでは、次の事項を検討することになります
- 貸倒損失の検討
- 通常の更正の請求
- 後発的理由による更正の請求
- 嘆願書の提出
単純に更正の請求書を提出すれば良いと言うものではなく、きちんと法律や通達を調べ(場合によっては過去の判例も調べて)、お手続きをする必要があります。
本件の顛末ですが、結果的に税金を税務署から戻して貰うことができました。本件では、極めて珍しい「後発的理由による更正の請求」に該当する物として手続きを致しました。税務署員の方にきちんとご説明したところ、事情をご理解頂き、税金を還付して頂くことができました。
具体的な事例(2)
この他にも、士業の先生方(弁護士先生や司法書士先生)の更正の請求をいくつかお手伝いしたこともございます。
よくあるお間違いとして、「売上を多く申告してしまった」「経費となるべきものを入れていなかった」「消費税を多く払ってしまった」というものが挙げられます。特に消費税についてのお間違いは多く、多く払っているケースはよく見受けられます。これらは、通常の更正の請求になりますので、税務署にきちんとした説明資料をつけて提出すれば、おおむね還付が認められます。
また、「消費税の届出書をきちんと提出していなかったために消費税を多く支払っていた」ということも多いです。(具体的には消費税簡易課税選択届出書の出し忘れが多いです。こちらは更正の請求をすることができず救済はされませんが・・・)
最初から税理士に相談することが最もコストが安くなります
幸いにも、弊事務所で行った更正の請求は、全て税務署に認めて頂きました。ですが、場合によっては、きちんと説明を尽くしても認められないことがあるかもしれません。そのようなことにならないよう、税務について迷われたときや、大きな取引を実行する前は、事前に税理士にご相談することです。税理士に依頼して、結果的に税金が戻ったとしても、時間やコスト(税理士報酬等)が、かかってしまいます。
弊事務所では、更正の請求といった、税金のお間違いを修正する手続きについて、多くの実績もございます。ご自分が税金を多く払っているかもしれないと感じられた場合は、ご相談ください。
※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。