税理士 石橋將年(いしばしまさとし)
中央区で開業している税理士の石橋です。
地主様やビルオーナー様は、受け取った地代や家賃は、原則として不動産所得となります。
これらの収入の計上時期は、他の所得と異なり、独特な点があります。
ご自分で確定申告をされている不動産オーナー様も多いと思いますので、その注意点をご説明したいと思います。
(平成27年11月6日追記)
いつ収入にあげればよいのか?
原則の取り扱い
不動産を貸す場合は、普通は契約書を作るでしょう。
例えば、アパートの賃貸借契約書には「今月末までに来月分の家賃を払う」と書いてあると思います。
この場合は、平成26年12月31日に受け取った家賃は平成27年1月分の家賃ですが、平成26年12月31日の収入としなければなりません。
ですから、年の途中に入居した場合、例えば、平成26年9月1日に入居した場合は、平成26年9月~12月分で4ヶ月貸していたことになりますが、家賃は5ヶ月分もらっていますから、5ヶ月分を収入にあげることになります。
また、平成26年12月31日までに入居者が支払いにこなくても(支払いが遅れも)、収入にあげなければなりません。もらえる権利が確定したときに、収入にあげることとされているからです。
特例の取り扱い
不動産貸付業を事業的規模で行っている方は、帳簿をきちんとつけている、といった一定の要件を満たせば、賃貸期間と受け取り時期とを対応させて収入にあげることができます。
そうなれば、平成26年9月1日に入居した場合は、貸していた期間は4ヶ月、収入にあげる金額も4ヶ月分となります。
また、事業的規模でされていない方も、帳簿をきちんとつけている、といった一定の条件を満たせば、この取り扱いをすることができます。
なお、途中で原則から特例、特例から原則へと切り換えることもできます。この場合は、切り換えた年は、11ヶ月分、13ヶ月分の家賃を収入にあげることになります。
詳しく知りたい方は、少し難しいですが、国税庁の「不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額 の計上時期について」をご覧ください。
(※地代(土地の使用料)も、上記と同じ考え方になります)
更新料はいつの収入にすればよいか?
更新料等の一括で受け取る金額は、分割計上ではなく、原則として、契約効力の発生日に全てを収入金額に計上しなければなりません。
通常は、受け取った日が契約効力発生日のはずですから、一時に多額の収入があがり、所得税が一時的に多くなってしまう場合があります(特に都心の土地の更新料は多額になりやすいです)
しかし、これには特例も設けられています。平均課税という精度です。
これは、一時的に多額に受け取った更新料に、多くの所得税がかからないようする制度です。
平均課税の対象となるのは、変動所得(こんぶ等の漁獲量が変動するもの・作家の原稿料のように収入が変動するもの)と、臨時所得(プロ野球選手の年俸・不動産の更新料)とに分けられます。
平均課税は、確定申告の時に、適用したいという紙を一緒につけて申告しませんと認められません。
税金が大幅に安くなる制度ですから、多額の更新料や、数年分の家賃を一度に受け取った方は、必ず平均課税を検討しましょう。
敷金や保証金のうち返金不要の部分はどうすれば?
アパートや事務所を貸すと、敷金(保証金という名前の場合もあります)を預かります。
この敷金は、そのまま全額返す場合もありますが、一部を償却(返金時にオーナーがもらう)する場合もあります。
償却する分(返さなくてよい分)については、オーナーご自身のお金になりますから、当然、収入にあげて確定申告しなければなりません。
これはオーナー様もご理解されているでしょう。
問題は、いつの収入にすべきかです。契約書の条項を見てください。
「退去時に敷金100万円のうち40万円を償却する」と書いてある場合
そのまま読めば、「退去した年に40万円を収入にすればよい」とお思いかもしれません。
ですが、それでは間違いです。
これは、「入居したときに既に40万円はオーナーのもの」とも考えられます。
ですから、この40万円は入居した年の収入にしなければなりません。
「退去時に敷金100万円のうち解約時賃貸料の4ヶ月分を償却する」と書いてある場合
入居時の賃貸料が月額10万円だったとします。
解約時の賃貸料は、いくらになっているでしょう?
例えば不況により月額5万円になっているかもしれません(少なくともあがることは考えにくいですよね)
ですが、この場合、家賃が値下がりする「かも」しれないというのは考慮されません。
入居時の賃料10万円の4ヶ月分、40万円を入居した年の収入にあげることになっています。
「入居から1年後に10万円、3年後に30万円償却する」と書いてある場合
入居してから1年たちませんと、10万円はオーナーのものになりません。
ですから、1年たった段階で10万円を、3年たった段階で30万円を、それぞれオーナーの収入にします。
「退去時に敷金を返金する」と書いてあったが、内装修繕等で修繕費をもらい残った敷金を返さなかった場合
退去した時には、敷金から修繕費用を払うオーナー様も多いと思います。
そして、残った敷金を返すことになりますが、少額である場合は返さないことも結構あります。
その場合、返さなくてよい金額は、退去した年の収入に計上します。
一口に計上時期といっても、もらった地代・家賃を、単純に収入金額に計上するだけではないのです。色々な注意点があります。
また、平均課税というは、知っている人だけ得をするという制度です(他にも同様の制度は種々存在します)。
オーナー様も日々の勉強が大切ですね。
※本記事についてのご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。