税理士 石橋將年(いしばしまさとし)
不動産オーナー様の悩みは、人それぞれ、千差万別だと思います。このコラムでは、税理士の視点から気づいた、様々な問題について、書いていきたいと思います。
今回は、確定申告書、なかでも青色決算書の記載方法についてです。不動産オーナー様は、不動産から得た利益について、年1回、3月15日までに確定申告します。不動産オーナー様の中には、税理士に頼まず、ご自分で書かれている方もいらっしゃると思います。
そのときにご注意いただきたい事項があります。それは、確定申告書の記載方法です。
近年は税務署も工夫していて、確定申告書の記載方法について、分かりやすいパンフレットを配布しています。また、これらはインターネットでも取ることができますので、便利な時代になりました。
そのため、パンフレット(確定申告の手引き)を読めば、大体のことは分かるようになっています。また、どうしても分からない場合は、税務署に相談に行けば、結構親切に教えてくれます。以前は、税務署に聞きに行くと、税務署員に嫌な顔をされることもあったのですが・・・(税務署に限らず、区役所等も、近年は対応が本当に丁寧になりましたね。お客様なんて呼び方もしますし)。
しかし、それでもご注意いただきたいポイントがあります。それは次のような部分です。
減価償却費の欄は正確に記載されているか
建物のように、数十年に渡って使う予定ものは、支払った時に一時経費にするのではなく、資産の種類ごとに、国が定めた予定年数(耐用年数)に渡って、少しずつ経費にします。これが減価償却という制度です(減価償却費の計算欄は、青色決算書(不動産所得用)の3ページにあります)。
ご注意いただきたいのが、取得年月と耐用年数の関係です。当たり前ですが、減価償却は、資産の購入費用を、耐用年数の期間内で少しずつ経費にするわけですから、耐用年数を過ぎたら経費することはできません。
初めてご依頼いただくお客様の青色決算書を見ると、耐用年数以上に減価償却をしているものが、結構ございます(なかには数十年以上余分に計上しているものも・・・)
その年の確定申告書を記入する際は、まず初めに、その資産が取得年月から耐用年数を超えて使用していないか、全資産ごとに確認するところから始めましょう。
必要経費を科目ごとに記入する
青色決算書(不動産所得用)の必要経費の欄は、租税公課から給料賃金までは、最初から印刷されています。これらの項目は、きちんと分けて記入しましょう。
問題は、最初から印刷されていない経費(例えば、不動産屋への仲介手数料や水道光熱費、旅費交通費等)です。これらは、必要経費欄に空欄がありますので、そこにできるだけ科目ごと(内容がわかる科目を適宜記載すれば良いです)に分けて記入しましょう。その他の経費に一括で記入するよりも、心象が良くなるものと思われます(もちろんケースバイケースですが)。
また、この各科目への振り分けは、毎年同じ基準でやりましょう。この青色決算書はOCR様式(機械により数字が読み込まれ、税務署内のシステムに保存される)になっておりまして、毎年の数字を税務署員が確認できるようになっております。そして、ある項目の数字が昨年とあまりにもかけ離れていたりすると、税務署員が気づくようなシステムになっているそうです。そのため、毎年おなじ基準で科目振り分けをすべきでしょう。
特別な事項はきちんと説明する
例えば、多額の修繕費支払いが発生したとします。修繕費は支払額がそのまま経費になるわけではなく、資産の使用年数が伸びたとされる分は、減価償却資産として、数十年にわたって経費にしなければなりません。
特に大規模修繕は支払額が多く、税務署もチェックする項目です。青色決算書の修繕費の欄に、数百万円以上の修繕費が計上されていれば、ちょっと心配になりますね。
そういう時は、青色申告決算書の4枚目にある「本年中の特殊事情」を利用すると良いでしょう。この欄は、税務署に対して、特別に説明したい場合に記載します。
例えば、賃貸アパート屋上の雨漏りで、500万円の修繕費を支払ったとします。支払った額のうち、建物の耐用年数が伸びた分は、その年の経費とならず、数十年に渡って減価償却により経費にしていかなければなりません。
そこで、本年中の特殊事情の欄に「修繕費500万円は、屋上の雨漏りのための防水工事である。維持管理のためにやむを得ない措置であり。一般的な工法により行った・・・云々」等の事情を記入し、税務署に対し、価値が増加していない旨を説明するのです。
この説明で税務署が納得すれば、税務調査に来る可能性が少なくなるかもしれません。また、上記の様な修繕費以外でも、税務署に説明したい事項があれば、疑いをもたれないよう、積極的に記入すべきだと思います。
これら以外にも様々な注意点があります。きちんとした確定申告書を提出することにより、税務調査の可能性も低くなりますので。ご心配であれば税理士に依頼される方が安心です。
※本記事についてのご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。