税理士 石橋將年(いしばしまさとし)
こんにちは。中央区日本橋茅場町の税理士の石橋です。
お知り合いの不動産業者様に、不動産を交換したときの税務についてご質問を頂きましたので、簡単にまとめてみました。
不動産を交換するとは?
例えば、次のような場合は、不動産同士を交換することがあり得ます。
- 土地と土地を交換する場合
- 土地と借地権を交換する場合
土地と土地を交換する場合とは?
土地と土地とを交換する、そんなことがあるのかとお思いでしょうが、たまにあります。
具体的には、お隣同士の土地を交換する場合です。お隣同士で交換すれば、オセロの白黒のコマのように、土地と土地とがひっくり返って入れ替わります。そうすると、お互いが地続きになり、両者の土地の価値が高まることになるのです。
下記のように入れ替われば、それぞれの土地の価値は高まりますね。
土地と借地権とを交換する場合
土地と借地権とを交換する場合があります。正確には「底地」と「借地権」です。
土地は他人に貸しますと、半永久的に戻ってこないです。(定期借地権等であれば年数が経てば戻ってきますが)
ですから、建物の所有を目的として、いったん土地を貸しますと、土地を借りている借地人は「借地権」を、土地を貸している地主は「底地」を持つことになります。
借地権は単独で売却することもできますが、原則として地主の許可がないと売却できません。また、底地は単独で売却できますが、業者に売ると二束三文で買いたたかれることになってしまいます。
そこで、下記のように、「借地人が持っている借地権」と「地主が持っている底地」とを交換するのです。
こうすることにより、使える面積は減りますが、それぞれ完全な所有権を持つことができます。ですから、売却しようが、他人に貸そうが、自由に利用できるのです。
上記のように交換すれば、借地人は緑部分を、地主は青部分を単独所有することができます(もちろん売却も可能です)。
ですので、こちらの方法も、(頻繁ではありませんが)たまに行われます。
不動産を交換した場合はどのような税金がかかるのか?
税金では、交換を譲渡(売却)したと考えます。
ですから、
- 借地人は地主に借地権をを売却したものとされ譲渡所得税がかかる
- 地主は借地人に底地を売却したものとされ、譲渡所得税がかかる
といったことになり、普通であれば、両方とも譲渡所得税がかかってしまいます。
ですが、「交換の特例」という法律があります(所得税法58条)
これは、一定の条件を満たせば、譲渡(売却)がなかったものとして、譲渡所得税をかけないようにしよう、という税金の特例です。
特例ですから、要件が結構厳しいです。要件は次のとおりです。
- お互いの財産が固定資産であること
- 交換直前に同じ種類の資産であったこと
- お互いが1年以上所有していたもの、かつ、相手方が交換のために取得していないこと
- 交換により取得した資産を、交換により譲渡した資産と同じ用途に使うこと
- 両者の金額の差額が2割以下であること
- 確定申告をすること
一般の方が注意するべきは、3.と4.でしょうか。
3.はお互いが満たしている必要があり(双方要件)、4.は摘要しようとする方のみが満たしていればよい(単独要件)となっています。
今回のケースのように、借地人と地主とでは、多くの場合、全ての要件を満たすでしょうから摘要できると思いますが、万が一、適用できなかったら譲渡所得税がかかってしまいますので、慎重に行いたいものです。
また、この他にも、登録免許税(不動産の交換でもかかります)、印紙税(契約書の金額に比例)がかかります。まれに、印紙税の事を考えて、契約書に金額を入れない方がいらっしゃるようですが、そうしますと税務申告のときに困ることになります。ですから、お互いが認識している金額をきちんと記載しましょう。
土地や借地権の交換は、頻繁にあるわけではありません。(特に中央区といった都心では、借地権と底地との交換はあまりないかもしれません)
ですが、もし交換を行う際は、くれぐれもお気をつけください。交換はあくまで特例になりますので、間違えますと即アウトになってしまいます。専門家の意見を聞きながら、慎重に行ってください。
※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。